目次
- ○ はじめに
- ○ 理論化学の特徴
- ○ 無機化学の特徴
- ○ 有機化学の特徴
- ○ 共通テストの出題割合
- ○ 個別学力試験の出題割合
- ○ 化学が苦手な受験生は有機化学から
- ○ 自然科学は身近なものから
はじめに
化学と言ってもその分類は様々であり、高校では理論化学・無機化学・有機化学に大きく分類されています。しかし、この三つは同じ化学でもかなり内容が異なります。
しかも、大学に行くとこれらは別科目として扱われますし、理論化学などはさらに細分化されていきます。
今回は化学がとても苦手で、困っている受験生のみなさんに お勧めの克服法 をご紹介していきたいと思います。
結論から言うと、有機化学から取り組んでいくことをお勧めしますが、その理由を各分野ごとの学習を踏まえながら説明していきたいと思います。
また、今回のお話は、化学の学習が一通り終わっている受験生もしくは無機化学の学習までは終わっている受験生向けのお話になります。
理論化学の特徴
一口に理論化学と言っても様々な単元があります。
大まかにまとめると、結晶構造・状態方程式・エネルギー・イオン・酸化還元・化学平衡になるでしょうか。それぞれが全く異なる現象を扱うので、苦手意識を持ってしまう人が出やすいのかもしれません。
特に酸化還元から電池を学ぶ時や、化学平衡の単元は理論化学の中でも理解しづらい単元となり一気にわからなくなる人が増えてきます。
また、イオン(酸塩基)と酸化還元はかなり混同しやすいので注意が必要です。
特に化学平衡の分野は難易度が高く、反応速度の高度な問題になると高校の範囲を超えますが微分積分学を使って計算したほうが早いケースもあります
(実際大学では使います)。ただ、覚えなければいけない内容は有機化学・無機化学に比べて少ないため、 一度理解してしまえば安定して得点しやすい分野 でもあります。
無機化学の特徴
無機化学は理論化学と変わり、現象の理解よりも暗記のほうが重要な単元になります。
様々な金属・非金属元素を扱いますが数学的要素よりも反応式や生成物の性質を覚えていくことが重要です。この単元の難点は、生成した物質が『沈殿するのかしないのか』『色は何色か』等を覚えるのが結構手間なことでしょう。
周期表を指標としてある程度の法則性はあるのですが、高校の範囲で説明しきれるものではなく基本的に 不規則なものを一つ一つ覚えていく必要があります。 私も受験生時代はなかなか覚えることが出来ず、何とか語呂合わせを作ったりして頑張った記憶があります。
有機化学の特徴
ひとくくりに有機化学といましたが、教科書では有機化学と高分子化学の単元に分かれています。
有機化学も無機化学と同様で、覚えることが多い単元になりますが、少し様相が異なります。無機化学は周期表を頼りに性質を把握し、法則性の薄いものは機械的に覚えるイメージですが、有機化学も周期表は使う一方で、官能基と呼ばれる有機化合物の性質を決める原子群から性質を予測したり、分類して覚えることになります。
また、有機化合物の成り立ちや構造について考えるパズルのような問題も多く出題されるため、 理論化学の知識背景が薄くとも何とかなりやすい単元 ともいえるでしょう。
余談ですが、官能基に詳しくなりすぎると化合物を見ただけで『すっぱそう』とか『あまそう』とか味を想像するようになる人も出てきます。
共通テストの出題割合
2023年の共通テストでの出題は大きく分けて1・2番は理論化学、3番は無機化学、4・5番が有機化学でした。
これはセンター試験の頃からそこまで大きく変わることなく、全体の40%程度が有機化学がらみの出題となっています。また無機化学は20%程度の出題となっており、比較的暗記で対応できる分野が全体の60%ほどとなっています。もちろん理論化学のバックボーンを必要とする問題も出ますが、1・2番に比べて計算も少ない傾向にあり、 かなり取り組みやすい のではないでしょうか。
個別学力試験の出題割合
これは大学によって大きな差が出ます。
有機化学の配点割合を調べてみると、少ない大学では3割程度ですが、多い大学になると6割にも達することがあります。すべての大学の統計を取ったわけではありませんので大雑把ですが、半分くらいは有機化学がらみの出題になっているように思われます。もちろん個別学力試験は共通テストと異なり、複数分野にまたがって出題されやすいので割合として考えるのは一概に正しいとは言えませんが、それでも かなりの割合で有機化学からの出題があると思って間違いないでしょう。"
化学が苦手な受験生は有機化学から
多くの受験生を見てきましたが、化学がさっぱりわからないと言う受験生の多くは理論化学で苦戦しているケースが多いように思います。
しかし、理論化学は実際数学に比べるとそこまで難しくないはずです。化学に対する苦手意識が理解を妨げているパターンをよく見かけます。
自己診断は難しいかもしれませんが、あなたがもし理論化学で煮詰まっているなら 一度理論化学から離れて有機化学に集中してみると良いかもしれません。有機化学は比較的学習した努力が点に現れるまでに時間がかかりません。手っ取り早く有機化学で点を稼ぎ、化学の苦手意識を薄めることで理論化学の理解度を上げると言うのも悪くない方法です。
自然科学は身近なものから
これは化学に限ったことではないでしょうが、身近な現象ほど理解しやすいと言うこともあります。
有機化学で習う物質は、PET(ポリエチレンテレフタレート:PETボトルの原料)などのように身の回りにある物質を扱うことも多くあります。理論化学が目に見えないものや事象を扱うのに対して、有機化学は身の回りのことを取り扱ったりすることがあるので、化学が苦手な受験生でも取り組みやすい可能性があります。
化学に苦手意識を持っている受験生の皆さん、 自然科学は本来面白いものです。まずは身近な物質から攻略していくと言うのも一つの手です。
楽しみながら頑張ってください。